Strange Strain Storage.

なんとなくゆるく復活

心の深層にある見えない真相。

 さて、きょうは前々から楽しみにしていた「隠された記憶」を観に渋谷へ行ってきました。昨日は風邪でダウンしていたわけですが、さすがに何日も前から絶対にいこうと決めていたことだったのでぶっ倒れるわけにもいかず、薬を飲んで日付を越える前に寝て、体調もそこそこ回復したのでのど飴にのどスプレーの完全防御体制で行ってきました。同行者はジョンさん、ネガティブハッピーさん、九内影丸さん。




 内容は一言でいうと・・・良くも悪くも恐ろしいほどにハイセンスな作品だった。



 幸福な生活を送っていたTVキャスターの男とその家族のもとにあるビデオテープが届く。そのビデオテープは家の前の通りを何時間も延々と映しているだけという気味の悪いもの。最初は無視していた夫婦だったが、それが2度3度と届くたびに家族の関係に変化が現れ、そして主人公が隠していた残酷な過去が徐々に明らかとなっていくのであった・・・。



 BGMや劇中の音楽が全くなく静かで、それがカメラを定点に置いて人々や風景の動きをじっと映し出すという手法を多用しているところと相まって緊張感あふれる展開を作り出しており、監督の止め処なく溢れる表現力を感じることができた。ただしこの静かな雰囲気に少しでも眠気を感じた人はアウト、即座に深い眠りに陥ることでしょう・・・(笑)。


 しかし卓越した表現力というものは決して万人に通ずるもののみではなく、この作品のラストは人々の理解を超越したかなり消化しづらいラストになっている。あるショッキングな展開(*1)を越えた後、物語はある程度の緊張感を残しつつ、この後の展開を観る者に期待させるのだが・・・そのままの流れでごく自然に終了してしまうのだ。つまり完結が明瞭でないためストーリーとして成立しなくなってしまうのである(*2)。これこそ表現力を突き詰めた後のひとつのあるべきカタチなのだろうと思った。



 内容についてではなく、作品自体についてとても考えさせられる映画だった。罪の重さ如何ではなく「罪を犯した側」の意識と「それを受け取る側」の意識が交錯しているということについて、なにか訴えかけたいものがあったのではないだろうか。ただ、少なくともとても4人もの大人数でドキドキワクワクしながら観るような映画ではなかったなぁ・・・とちょっと反省。同行者のお三方はこの作品が楽しめただろうかと考え込んでしまっています。



 万人向けに作られたぬるい演出ではなく表現力がダイレクトに迫ってくる難解な映画が大好きで、尚且つある程度の緊張感が快感に感じ、さらに若干ショッキングな場面に耐えられることの出来る方には是非オススメしたい。いろいろと考えさせられることでしょう。



 ちなみにこの作品、やはり評価は賛否両論なようで、特に映画評論家として知られるおすぎは「この映画の面白さが全く分からなかった」と一蹴していたんだそうな。しかしこの作品は面白く感じようがつまらなく感じようが「面白さが全くわからなかった」の一言で切り捨てられるような作品ではないはず。映画評論家と謳っておきながらこの人のセンスはこの程度だったのかと正直ガッカリ。まぁ、もともと好きではないけれどねw





 その後はせっかく渋谷に来たということで、数年ぶりにまんだらけに行ってきた。相変わらず薄い空気の中に濃い人々が密集していて感動。そんななかで女性向け同人誌のコーナーで必死にRINNO先生の本を探す自分にも感動。結局なかったし。


 ・・・そういえば今思い出したんだけど、いるも晴章こと大森葵先生の本見つけたのに買うの忘れてたーorz もう暫く渋谷行かないだろうからな・・・1ヶ月ほど売れ残っていることに期待。もしくは誰かが買っておいてくれると嬉しかったりするけど・・・無理か。




*1:前述の手法により、本当は絶叫モノであろうそのショッキングなシーンですら普通に展開のひとつとして受け入れることが出来たのも、この作品の力のひとつであると言えよう。

*2:ただ、ラストのある何気ない風景の一コマで、ある人物とある人物のつながりが明らかになっていたのを自分は見逃さなかったけれど・・・それが、ヒントにはなりえるもののストーリーの結論に直結するかというとそうでもないのが不思議なところ。というか、これを見逃したであろう大多数の人は全くヒントのないところからその結論を導き出さなければいけないわけで、それは非常に難解な作業であり同時にひどくつまらない作業でもある。それほど、今になってなんでもなく見えがちなラストのシーンがとても重要に見えてきた。もしかして「衝撃のラストカット」とはこのことだったのだろうか・・・と若干の恐怖を覚えつつある。これもこの作品の持つ恐ろしい面なのだろうか。